知財のポイント

 
 
 
 
 

このコーナーでは、知財に関する情報などをご紹介しています。
 
知財のお役立ち情報
 

ドメインネームと商標

 
当所に寄せられる問い合わせで、最も多いのが著作権に関する問い合わせであり、次が商標(特に、文字商標と、ドメインネーム、商品名、店舗名、商号)に関するものです。
 
今回は、ドメインネームと商標との関係について、ドメインネーム所有者側と商標権者側の2つの観点から解説をします。
 
 まず、ドメインネームは、インターネット上のアドレスの一種と言えるかと思われますので、商標とは直接には関係はしません。
 しかし、例えドメインネームであっても、事実上宣伝・広告に広く利用し、実質的に商標としての機能を発揮している場合が時々見受けられます。このような場合は、商標としての役割を果たしていると言うことになり、同一・類似の登録商標の権利範囲に入ってしまうかもしれません。そのような場合はその登録商標の侵害となる可能性もございます。

 

1.貴方がドメインネーム所有者側である場合

もしあなたが所有するドメインネームと、他人の登録商標が似ているのではないか?と思ったら以下の点を確認しておいた方が良いかもしれません。
 
(1)同一・類似
 
あなたが使用している名前(ドメイン)と、その商標登録とが類似するか否か確認する必要があります。
 
まず、マークとして同一・類似範囲であるか否かを確認します。
 
次に、使用する商品・サービスが同一・類似かを判断する必要があります。
 
あなたの使用しているドメインで販売している商品等が、登録商標の使用商品等と類似かどうか判断します。この結果、マークも、商品・サービスも、共に同一類似範囲内であれば、法的な問題が生じるかもしれません。
 
ところが、近年、非常に多種多様なサービス・商品が市場にあふれており、サービスの類似・非類似の判断は非常に難しい作業となっております。
 
専門家が非類似であると判断しても、裁判で「類似」であると判断されることも珍しくはありません(キャリアジャパン事件 大阪地裁平成14年(ワ)第13569号、平成15年(ワ)第2226号等々)。
 
したがって、そのあたりの判断は非常に慎重にするべきです。

 
(2)商標として使用しているかどうか? 
 
しかし、同一・類似を判断すると同時に、あなたの使用する「ドメイン」が果たして商標なのか?という点はよく考えて判断すべきです。
 
そのドメインを使用しているサイトが販売サイトであれば、ドメインネームがその販売サイトの商品の商標であると認定されてしまうこともあるかもしれません。
 
一方、そのサイトが、商品やサービスとは何の関係もなく、商標としての使用は全くなされていない場合には、そもそも商標ではなく、単なるインターネット上の「住所」に過ぎない場合もありえると思われます。
 
したがって、そもそも使用する商品・サービスというものも「無い」ことになります。この場合は、他人の登録商標との間に法律的な問題は生じにくいと思われます。
 
ただし、商標ではないという場合でも、不正競争の対象となる場合もまれにありますので、いずれにしても専門家とよく相談することが大切です。

 
(3)継続的使用権
 
他人が登録商標を登録する前からドメインネームを使用している場合、継続的に使用する権利が認められる可能性があります。しばしばこの権利を主張したいと相談に来る方がいらっしゃいます(皆さん勉強熱心ですから)。
 
しかし、この主張も慎重にするべきかと思います。
 
この主張をするには、他人のその商標出願時に、自分のドメインネームがよく知られている(周知)であることを立証しなければなりません。周知であることの立証は一般にコスト・時間が非常に必要となる作業であることが知られております。
 
さらに、この主張をすることは、自分のドメインネームが有名であることを立証するわけですから、下手をすると自分のドメインネームが商標であることを認めてしまうことになるかもしれません。
 
むしろ、「商標ではない」との主張が可能であるならば、あえてこのような継続的使用権の主張をしない方が良いかもしれません。
 
したがって、それが本当に正しい対応であるのかどうか、実体に即して、専門家を必ず交えて慎重に判断することが重要です。

 

2.貴方が商標権者側である場合

(1)一方、貴方が一定の登録商標を有していて、その登録商標が有名になった場合に、悪意の第三者がその登録商標と同一か、またはその登録商標を一部に含む名称をドメイン名として取得してしまうことがあります。
 
 すなわち、著名な会社名や登録商標をそのまま、または一部に含むドメインネームを取得し、これを悪用したり、または本来の商標権者に売りつけようとするサイバースクワッティングも散見されております。
 
 これに対して、現在の不正競争防止法におきましては、(あなたの)商標を含むドメイン名の不正取得行為等のサイバースクワッティング行為を不正競争行為と位置づけて便宜上の救済が図られております。
 
 
(2)また、最近では、このサイバースクワッティング行為も非常に巧妙に行われております。
 
例えば、「第三者が御社の会社名についてドメインネームを取得しようとしておりますが、今なら格安で御社にお売りすることができます」などという一見、親切そうなメールで誘いをかけてくる場合もあります。
 
つまり、御社の会社名.jpなどのようなドメインネームがまさに他者にとられようとしている状況があたかもあるように見せかけ、ドメインネームを販売しようとしている方も見受けられます。
 
このような行為は特に海外からのメールによる場合が多く、一概に不法行為と断定して、追求することが困難な場合も多いので、厄介です。
 
このようなメールが送られてきた場合、必要でないドメインネームであれば断る勇気も必要となるかと思われます。もちろん、お金を出して購入されても問題はございません。

 
 

※ご注意

なお、この文章は、専門用語をなるべく使用しないことを心がけているので、厳密に言えば若干不正確な表現もあります。そこで、実際の具体的な商標権との関係の判断の際は、弁理士等専門家の見解をお聞き下さい。