日本と中国における意匠登録出願制度の簡単なご案内

第1 日本における意匠登録出願制度

(1)意匠制度の概要:保護の対象

 日本における意匠制度の保護対象である「意匠」とは、物品の美的外観であり、形状、模様、色彩またはこれらの結合です。いわゆるデザインと考えてよいです。権利存続期間は、登録から20年です。

(2)出願

 物品のいわゆる6面図(正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図、右側面図)が必要であり、この6面図が権利の基本となります。しかし、一般に6面図だけでは十分ではなく、斜視図、部分拡大図等の参考図も適宜必要となります。また、透明部分がある場合は、その場所を説明することが必要です。
 図面は、線画による面図が一般的には好ましく、CAD図面等を流用することができると便利です。また、色彩が付されてもよく、CG画像でもよいです。写真でもよいですが、権利範囲は少々狭くなってしまうので、特に6面図に関してはいわゆる線画を原則としておすすめしております。ただし、斜視図等の参考図を写真をCGで表現することも多いです。
 CAD図面や製品の設計図があれば、それに基づき図面を作成するのが好ましいですが、現物や模型があれば、それから図面を起こすこともできます。
 また、一意匠(一物品の一形態)ごとに、一出願する必要があります。

(3)審査、登録

 特許と同様に、新規性や、創作非容易性その他の要件が登録のための要件として要求され、これらの要件を充足していない場合は、特許と同様に、拒絶理由通知が出されます。拒絶理由通知に対しては、意見書、補正書を提出することができます。
 要件を充足している場合は、登録査定が出された後、所定の登録料を支払えば、意匠登録を受けることができます。

(4)特有の制度

部分意匠
 意匠は原則として、物品全体の外観・形状ですが、物品の「部分」についての意匠の登録を受けることができます。この場合、その「部分」以外は破線で表現する場合が多いです。

関連意匠
 自己の登録意匠又は出願中の意匠にのみ類似する意匠は、関連意匠として、意匠登録を受けることができます。

秘密意匠
 秘密意匠制度があり、最高3年間、登録後の意匠を秘密にすることができます。

動的意匠
 動的意匠について登録を受けることができます。この場合、その動きの前後における各場面の図面が原則として必要となります。

(5)手続き上の注意 ( 弊所における手続の注意点 )

 その物品のCAD図面があれば、それを流用して図面を作成するのがコストや時間を考慮すれば好適です。また、物品(又は模型)をお貸していただければ、物品(模型)から、弊所で図面を起こすこともできます。
 出願には「物品の説明」や「意匠の説明」が必要ですが、弊所で作成いたします。

第2 中国における意匠登録出願制度(日本人が利用する場合の手続)

(1)意匠制度の概要

 日本と異なり、新規性等の要件を審査せず、方式的な審査のみで登録を行う無審査登録主義が採用され、権利行使時に意匠権評価報告書を求めることができます。日本の実用新案登録制度に似ております。
 また、基本となる6面図以外の参考図も完全に一致する必要があり、縮尺を同一にします。
 権利存続期間は、出願から10年間です。

(2)優先権

 日本人であれば、まず日本に意匠登録出願を行い、その後、優先期間(6ヶ月)以内に中国に意匠登録出願をすれば、日本出願時に中国に出願したのと同等の取り扱いとなり有利です。なお、優先期間を経過した後でも、有利にならないだけで、出願そのものは可能です。

(3)出願手続

 6面図以外の参考図も完全に相互に一致する必要があり、原則として縮尺を同一にします。
 類似していれば、複数の意匠(最大10)を一出願で提出することができます。なお、どの意匠が基本意匠かを、意匠の簡単な説明で記載する必要があります。なお、この場合の「類似」については、審査官によって審査されます。関連する事項として、日本のような関連意匠制度はありません。
 部分意匠制度はないので、部分以外の全体(破線部分も含めて)を図面で表して出願する必要がありますが、その場合、部分意匠である日本出願からの優先権が認められるか否かはケースバイケースで判断する必要があります。
 日本のような秘密意匠制度はありません。
 同一種類で且つセットで販売される物品の2以上の意匠は、一出願ですることができます。
 意匠の簡単な説明が必要です。

(4)公告、登録

 方式的な審査が通過すれば、出願人は登録料・公告料を支払います。その後、意匠権が設定登録されて、その旨が公告されます。
 権利行使をする際には、意匠権評価報告書を得ることができます。
 意匠権が設定登録されていれば、税関での輸入差し止め等を申請できます。

(5)中国における手続き上の留意

 優先権主張の基礎となる日本出願の内容、特に図面を、適宜中国向けに書き換えて中国で意匠出願することが現実的には好ましいです。しかし、複雑な意匠の場合は、完全に新しく図面を起こす必要がある場合もあります。
 また、特許と同様に、出願人の中国語表記の名称が必要です。ご依頼いただければ、弊所が提携中国事務所と相談して案を作成することもできます(無料)。
 また、中国は、いわゆる1国3制度の国と言われており、香港、マカオに関しては、本土における手続とは別の手続が必要となる点も、特許と同様です。