Akamai事件 of 伊藤吉田国際特許事務所

Akamai事件

Limelight Networks 
    v 
Akamai Technologies,Inc.

原告:Akamai Technologies, Inc.(以下アカマイ)
被告:Limelight Networks(以下ライムライト)
対象発明品:コンテンツ配信サービス
出願日:1999年5月19日
特許番号:6,108,703

連邦巡回控訴裁判所(CAFC)

裁判番号:2009-1372
     2009-1380
     2009-1416
     2009-1417
判決:2012年8月31日

最高裁判所

裁判番号:12-786
判決:2014年6月2日

<事件のポイント>

アカマイの発明は、インターネットのスピードを向上させるために、使用量によってサーバーに保存されるべき特定のコンテンツを指定する「タグ付」に関連します。
・アカマイの特許クレームは、方法クレームであり、クレームを構成する動作の一つとしてタグ付を必要とする
・ライムライトの使用するシステムもタグ付を必要とするが、タグ付を行うのはライムライト自身ではなく、顧客やユーザーである
顧客やユーザーがタグ付を行うということで、アカマイの発明における動作の全てをライムライトが実行するわけではありません。しかし、ライムライトは間接的にアカマイの特許を侵害している、とアカマイが訴えを起こしました。

 2014年6月2日、アメリカ最高裁判所において、アカマイ事件について以下の判決が下されました。

「特許侵害を誘発すること(間接侵害)の成立要件は、誘発された者が一人で(又は一社で)特許クレームを構成する全ての動作を実行し、直接侵害していることを要する。」
以上の判断に基づき、連邦巡回控訴裁判所(以下CAFC)の判断を差し戻し、改めて審理を要求しました。

(1)まず、前審であるCAFCの判断をご説明します。

今回の事件について、CAFCにおいて2012年8月31日に判決が下された時には、「直接侵害を誘発する間接侵害は、直接侵害を成立させる行為全てを行っていない場合でも成立することがある」と判断されました。
これは、
①単一の主体Aが、他者Bがもつ特許の方法クレームを構成する動作の一部を行い、
②他者Cにそれ以外の動作を実行させるように誘導した結果、
③Bの特許権が侵害された。
④Aは、Bの特許の全てを直接侵害したわけではないが、Cに実行させた、として間接的に侵害の責任を負わなければならない。
ということでございます。
CAFCの判断と致しましては、「間接侵害が発生するためには直接侵害の事実は必要であるが、その直接侵害を引き起こす方法クレームの全ての動作を単一の主体が行う必要はない」とのことです。
従来のアメリカのプラクティスとしては、間接侵害が発生する要件として、直接侵害を引き起こす全ての行為を単一の主体が実行する必要がありました。
一方、今回のCAFCの「直接侵害を引き起こす方法クレームの全ての動作を単一の主体が行う必要はない」という判断により、従来のプラクティスが覆され、新たなプラクティスが生まれました。

(2)次に、上記CAFCに対するアメリカ最高裁判所の判断は以下の通りです。

上記CAFCの判断に対し、アメリカ最高裁判所は、
「被告であるライムライトは、単一の直接侵害者がいないにも関わらず、誘発される侵害の責任を負う必要があるのかどうか」
という点に焦点をあてました。
<CAFCの判断を覆す>
アメリカ最高裁判所は、「直接侵害として認められるためには、方法クレームの全ての動作は単一の主体によって実行されなければならない。このプラクティスに則って考えるならば、今回のアカマイ事件では直接侵害そのものが発生していないことになる。直接侵害が発生していないならば、間接侵害の発生もありえない。したがって、ライムライトはアカマイの特許を侵害しているとは言えない。」との判断を下しました。
CAFCの判断により、間接侵害の発生要件として、「直接侵害を引き起こす方法クレームの全ての動作を単一の主体が行う必要はない」との新たなプラクティスが生まれました。しかし、今回のアメリカ最高裁判所の判断により、間接侵害の発生要件は、「間接侵害が発生するためには、直接侵害を引き起こす方法クレームの全ての動作を単一の主体が行う必要がある」という従来のプラクティスを支持することとなりました。

◎ポイント◎

従来、米国におきましては、2つの基準がありました。

  • (1)まず、米国においての間接侵害は、直接侵害の事実が必要である。
  • (2)次に、米国において直接侵害は、単一の主体によって全て実行される必要がある。

 というものであります。そこで、従来は、間接侵害の成立のための直接侵害も単一の主体によって実行されるような直接侵害の存在が必要でありました。
 今回のCAFCの判断においては、間接侵害の成立における直接侵害の事実は必要であるが、この直接侵害は単一の主体が実行している必要はないと示し、従来のプラクティスを覆すものとなりました。
 これに対し、アメリカ最高裁判所におきましては、直接侵害として認められるためのその直接侵害の(方法クレームの全ての動作)が単一の主体によって実行されていないので、直接侵害が発生していないと認定し、直接侵害が発生していない以上間接侵害もまた発生していないとの判断を示しております。これによって、従来のプラクティスが踏襲されることになりました。
このような最高裁の判断の下、特許権者側は、以下の点に留意して権利の取得を行うことが好ましいです。

  • 方法の特許クレーム(ex.ビジネスモデル)の内容を考えるときには、そのクレームの中の全てのステップ(動作)が単一の主体によって実行されるようなクレームを設けることが好ましい。
  • 発明が、複数の主体によるインターネットもしくは通信に基づく場合は、一方のみ又は他方のみの行動に基づくクレームを考えること。
  • 複数の主体による実行を必要とするクレームを設けること自体は、決して悪いことではないと思われます。しかし、権利行使の点からは、送信のみ、受信のみ、サーバーのみ、クライアントのみ、スマホのみ、等それぞれ単独の主体による実行となるようなクレームが好ましいです。

クレームを考えるときには、以上のようなことに気をつけて作成することが望ましいかと思われます。