PCT国際出願に関するQ&A

Q1.国際調査報告を受領した場合に、出願人は何ができるでしょうか。
また、何をすべきでしょうか。

A1.
(1)国際調査は、関連のある先行技術を発見することを目的としてなされます(PCT15条)。

(2)出願人が取りうる手続
(a)文献の写しの請求(PCT20条)
出願人は、国際調査報告に記載された文献の写しを、下記の通り請求できます。

請求できる期間:国際出願から7年間
請求先:国際調査機関

(b)19条補正(PCT19条)
出願人は、国際調査報告を受領した後、下記の補正を行うことができます。

補正ができる時期:国際調査報告の送付日から2ヶ月以内
         又は、
         優先日から16ヶ月
         のいずれか遅い方
補正ができる対象:請求の範囲
補正ができる回数:1回に限られます。
補正書の提出先:国際事務局

 国際調査報告を見て、明らかに補正をすべき事項があれば、国内段階に移行する前に予め統一的に補正しておくことが好適です。国内段階移行後の審査を促進できる可能性があり、また、手続を統一的にすることにより、コスト削減とともに、国際出願の管理が容易となる可能性があります。
 なお、この19条補正の提出とともに、その補正が明細書や図面に与える影響につき、簡単な説明書を提出することができます。通常はこのような説明書を出しておくことが好適であるかと思われます。簡単な説明書は、文字通り簡単な説明書であって、おおむね英文500ワード以内が好ましいです(PCT19条、規則46.4等)。

(c)非公式のコメントの提出
出願人は、国際調査報告を受領した後、非公式のコメントを提出することができます。

コメントを提出できる時期:
特段の定めはありませんが、指定官庁への送付の遅れ等をさけるため、優先日から28ヶ月まで程度が好ましいです。
コメントの提出先:国際事務局

非公式のコメントは、優先日から30ヶ月経過後に各指定国に送付されます。

(d)国際予備審査の請求(PCT33条)
出願人は、国際予備審査の請求を行うことができます。
国際予備審査とは、請求の範囲に記載されている発明の新規性・進歩性・産業上の利用可能性について、予備的勝つ拘束力のない見解を示すためのものです。

国際予備審査の請求を行える時期:
 国際調査報告の送付日から3月
 又は、
 優先日から22ヶ月
 のいずれか遅い方
国際予備審査の請求の提出先:国際予備審査機関

なお、国際予備審査の請求に関連して、出願人はいわゆる34条補正をすることができます。

34条補正ができる期間:国際予備審査の請求をしたときから、国際予備審査報告の作成が開始されるまでの間(規則66.1(b)等)
34条補正ができる対象:請求の範囲だけでなく、明細書、図面に関しても補正をすることができます。

(e)補充国際調査の請求
 日本人が日本語で国際出願をする場合、日本特許庁が国際調査機関となります。そして、主として日本語文献が調査対象となります。
 しかし、場合によっては、日本語以外の文献調査を望む場合もあります。ロシアで権利化を考えている場合は、ロシア語の文献について調査をしたいという場合もあるでしょう。
 そのような(日本語以外の言語で先行文献調査をして欲しい)場合には、補充国際調査制度が便利です。例えば、ロシア語の文献調査を望む場合は、ロシア特許庁に補充国際調査を請求するのです。

 補充国際調査の依頼ができる外国特許庁(補充国際調査機関)
 ノルウェー特許庁、フィンランド特許庁、オーストリア特許庁、北欧特許庁、ロシア特許庁、欧州特許庁
 ※但し、申し込み(PCT/IB/375)(+費用支払い)自体は、国際事務局宛に行う。

補充国際調査の請求ができる期間
優先日から19ヶ月以内
 ---優先日から28ヶ月経過までに補充国際調査報告が作成されます。

 補充国際調査に関する注意点:
 ・請求に際しては、翻訳文が必要となる場合があります。
 ・国際出願に複数の発明が含まれていた場合、補充国際調査は、最初の1発明を調査します。
 ・19条補正や34条補正は考慮せず、出願時の内容で調査します。

Q2.19条補正をするべきでしょうか。
それとも、各国に移行してから補正するべきでしょうか。

A2.
 19条補正は、国際段階で統一的に行えるので、明らかにこのように補正すべき事項というものがあれば、国際段階で、統一的に補正をすること(つまり19条補正)が好適です。統一的に行えば、各国の審査処理の促進を図り、コスト削減になる場合もあるかと思われます。また、各国の出願内容の統一を図ることができ、特許管理上便利であります。
 一方、判断が微妙な内容については、各国の審査官の見解を聞いてから補正をする方が一般には妥当かと思われます。